輸出管理を行う上で、「居住者」「非居住者」は必ず知っていなければならない言葉です。

まずは、この「居住者」「非居住者」が出てくる外為法第25条をご覧ください。

第25条  国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

輸出許可とは?では、1つ問題です。

日本国内にある日本法人が、日本国内にある外国法人の支店に、日本国内においてリスト規制該当技術を提供する場合、当該取引に経済産業省の許可が必要となるでしょうか?

まず、特定技術を日本国内において提供する取引ですので、第25条前半部分(「特定技術」を「特定国」において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者)には該当しません。

では、第25条後半部分「特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者」に該当するでしょうか。

この部分に該当するかどうかを判定するためには、「居住者」とは何か?「非居住者」とは何か?を理解していることが必要となります。

ここで、「居住者」と「非居住者」を一覧表にまとめましたので御参照下さい。

個人(自然人) 法人
本邦人 外国人
居住者 (1)日本に居住
(2)在外公館(例:在アメリカ日本国大使館)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
(1)日本国内の事務所(外国法人の日本国内にある事務所を含む)に勤務する者(例:外国人採用)
(2)日本に入国後6ヶ月以上経過するに至った者
(1)国内にある本邦法人
(2)国内にある外国法人の支店/事務所等
(3)日本の在外公館(例:在アメリカ日本国大使館)
非居住者 (1)外国の事務所(海外支店等及び現地法人並びに国際機関)に勤務する者(例:海外出向者等)
(2)2年以上外国に滞在する目的で出国し滞在する者
(3)(1)又は(2)の者の他、2年以上外国に滞在するに至った者
(4)上記以外の者で、一時帰国し、日本での滞在期間が6ヶ月未満の者(例:海外出向者の一時帰国等)
(1)外国に居住する者
(2)外国政府又は国際機関の公務を帯びる者
(3)外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人。ただし、外国において任命又は雇用されたものに限る
(1)外国にある日本の法人の支店、出張所その他の事務所
(2)日本国内にある外国政府の公館及び国際機関

上記表からもお分かり頂けるとおり、問題文の「日本国内にある日本法人」も「日本国内にある外国法人の支店」も共に、「居住者」に該当します。

ですので、第25条後半部分「特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者」には該当しないため、問題のケースでは経済産業大臣の許可は不要な取引であることになります。

  • 日本国内で規制技術を提供する場合は、居住者から非居住者への技術提供が許可申請の対象となる
  • 海外に向けて規制技術を提供する場合は、居住者・非居住者を問わず、許可申請の対象となる