特定包括許可とは、外為法48条1項の許可のうち、一般包括許可の適用外であって、継続的な取引関係を有する同一の相手方への特定の貨物の輸出について一括して許可を行うことを言い、特定包括輸出許可及び特定包括役務取引許可に分かれます。

(輸出の許可等)
第48条 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
2 経済産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、同項の特定の種類の貨物を同項の特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができる。
3 経済産業大臣は、前二項に定める場合のほか、特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引により貨物を輸出しようとする者に対し、国際収支の均衡の維持のため、外国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、又は第十条第一項の閣議決定を実施するために必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができる。

特定包括許可を取得していれば、その適用範囲内においては個別の輸出許可は不要となりますので、年に数件の輸出をされる方は包括許可を取得されることをお勧め致します。ただし、特定包括許可を取得したとしても、輸出令第2条第1項の規定による承認を必要とするものにつきましては、別途承認を取得する必要がありますので、ご注意ください。

(輸出の承認)
第二条 次の各号のいずれかに該当する貨物の輸出をしようとする者は、経済産業省令で定める手続に従い、経済産業大臣の承認を受けなければならない。
一  別表第二中欄に掲げる貨物の同表下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出
一の二  別表第二の二に掲げる貨物(別表第二の一、三六、三九から四一まで及び四三から四五までの項の中欄に掲げる貨物を除く。)の北朝鮮を仕向地とする輸出
二  外国にある者に外国での加工を委託する委託加工貿易契約(当該委託加工貿易契約に係る加工の全部又は一部が経済産業大臣が定める加工(以下「指定加工」という。)に該当するものに限る。)による貨物(当該委託加工貿易契約に係る加工で指定加工に該当するものに使用される加工原材料のうち、経済産業大臣が指定加工の区分に応じて定める加工原材料で当該指定加工に該当する加工に係るものに限る。)の輸出
2  経済産業大臣は、別表第二の二八から三三までの項の中欄に掲げる貨物について前項第一号の規定による承認をするには、あらかじめ、農林水産大臣の同意を得なければならない。
3  経済産業大臣は、別表第二の三五の二の項(二)、四二及び四三の項の中欄に掲げる貨物については、他の法令による輸出の許可若しくは確認を受けている場合又は他の法令による輸出の免許を受けている者が輸出する場合に限り、第一項の規定による承認をするものとする。

個別の輸出許可の場合は、契約成立後でなければ申請することが出来ません(このことにより契約書は、原則として、政府の許可が得られるまで契約が発効しない旨の規定を盛り込んだものであることとされています)。

ですので、契約成立と同時に輸出することは個別の輸出許可では原理的に出来ないことになります。

特定包括輸出許可の説明これに対して、特定包括許可を取得すると、適用範囲内において個別の輸出許可申請手続きは不要になります。これが特定包括許可の主要かつ最大のメリットでもあります。

ですので、輸出許可の必要な輸出が継続的に見込まれる限り、長い目で見れば特定包括許可を取得する方が個別の輸出許可を取得するより手間がかからないというメリットがございます。

輸出するのは年に1件ぐらいという方は、個別の輸出許可申請で対応が十分に可能ですが、年に数件を見込んでいる方であれば、この特定包括許可の取得は必須のものといえるのではないでしょうか。

では、以下具体的に、特定包括輸出許可について見ていきましょう。

1.特定包括許可の申請者

特定包括許可の申請を行うことができる方は、次のいずれにも該当する方です。

(1)輸出管理内部規程の整備及び外為法等遵守事項の確実な実施に関して、安全保障貿易検査官室から輸出管理内部規程受理票及びチェックリスト受理票の交付を受けている方。
ただし、外為法等遵守事項中「7 子会社及び関連会社の指導」の実施状況については、特定包括許可を行う場合における評価対象としません。
(2)外為法遵守事項の実施状況について、安全保障貿易検査官室による実地の調査を受けている方(実地の調査に基づく書面による指導を受けた方は、これに従わなければなりません。また、実地の調査を受けたことがある方又はこれを事実上承継している方による申請のときは、原則として、実地の調査が省略されます。)
(3)輸入者(買主及び荷受人をいう。以下同じ。)及び需要者(輸出された貨物を費消し、又は加工する者をいう。以下同じ。)との間で、又は取引の相手方及び利用する者(その取引に係る技術の提供を受けて利用する者をいう。以下同じ。)との間で、それぞれ6に定めるいずれかの継続的な取引関係等を有する方。
(4)輸出管理内部規程(安全保障貿易検査官室から輸出管理内部規程受理票の交付を受けているものに限る。)に基づき社内審査を実施した上で貨物の輸出又は技術の提供を行ったことがある方。
(5)申請に先立ち、その役員又は正規職員が適格説明会を受講している方(天災その他やむを得ない事情がある者を除く。)

 

2.特定包括許可の要件

(1)特定包括輸出許可
申請者が、継続的な取引関係等を有する同一の相手方に対して輸出令別表第1の2から14までの項の中欄に掲げる特定の貨物の輸出を行おうとする場合に、一括して許可を行ってもその輸出が国際的な平和及び安全の維持を妨げることとならないと認められるときに、特定包括輸出許可が出ます。
なお、継続的な取引関係等を有する輸入者又は需要者の要件は以下のとおりです。

(イ)需要者が確定していること。
(ロ)輸入者及び需要者の存在及び事業内容が明らかであると認められること。
(ハ)申請者に対し特定包括輸出許可により輸出された貨物を適切に管理することを内容とする誓約書を提出していること(需要者に限る)。
(ニ)輸入者と需要者が異なる場合は、契約書その他の申請者が入手した文書等により、輸出しようとする貨物が需要者に到達することが確からしいか確認できること。

(2)特定包括役務取引許可
申請者が、継続的な取引関係等を有する同一の者との間で行う外為令別表の2から14までの項の中欄に掲げる特定の技術を提供することを目的とする取引を行おうとする場合に、一括して許可を行ってもその取引が国際的な平和及び安全の維持を妨げることとならないと認められるときに、特定包括役務取引許可が出ます。
なお、継続的な取引関係等を有する取引の相手方又は利用する者の要件は以下のとおりです。

(イ)利用する者が確定していること。
(ロ)取引の相手方及び利用する者の存在及び事業内容が明らかであると認められること。
(ハ)申請者に対し特定包括役務取引許可により提供される技術を適切に管理することを内容とする誓約書を提出していること(利用する者に限る)。
(ニ)取引の相手方と利用する者が異なる場合は、契約書その他の申請者が入手した文書等により、提供しようとする技術が利用する者に到達することが確からしいか確認できること。

 

3.特定包括許可の範囲

(1)特定包括輸出許可
特定包括輸出許可の範囲は、別表Aにおいて「特定」と表記された欄にあたる貨物及び仕向地の組合せのうち許可証に記載されたものとなります。
ただし、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、コートジボワール、エリトリア、イラク、レバノン、リベリア、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、イランを経由又は仕向地とする場合は、特定包括輸出許可は適用できません。
(2)特定包括役務取引許可
特定包括役務取引許可の範囲は、別表Bにおいて「特定」と表記された欄にあたる技術及びその提供地の組合せのうち許可証に記載されたものとなります(提供地となる特定国と取引の相手方(契約の相手方のほか、当該取引において明らかとなっている限度において当該技術を利用する者を含む。)が属する特定国が異なる場合は、いずれの特定国についても「特定」と表記されていることを要します。)。
なお、特定包括役務取引許可が認められる取引に関する法第25条第3項第一号に掲げる行為については、外為令第17条第2項の規定に基づく許可を要しません。

 

4.特定包括許可の有効期限

特定包括許可の有効期限は、その許可が有効となる日から起算して3年を超えない範囲内において経済産業大臣が定める日までです。
ただし、変更の申請である場合は、変更前の許可の有効期限までの範囲において経済産業大臣の定める日までとなります。

 

5.特定包括許可の申請手続き書類一覧

特定包括許可の申請手続きに必要な書類については、下記を御参照下さい。

    • 特定包括許可申請書
    • 特定包括許可申請明細書
    • チェックリスト受理票の写し
    • 適格説明会の受講実績
    • 輸入者又は取引の相手方の概要の説明書
    • 継続的な取引実績又は見込みを示す書類
    • 需要者の誓約書

※必要に応じて、上記以外の書類を求めれらることがあります。